modan11のfootballの旅

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#1北海道コンサドーレ札幌 ~いざ、FC東京戦へ~

東京のプレス攻略とカウンター対策

 今節のFC東京は、攻守におけるハードワークが特徴だ。整備された守備とカウンターの鋭さで手堅くゲームを運ぶ。長谷川健太体制2年目をむかえ、チームの円熟味が増してきた。何よりも、あれだけのクオリティのある選手がハードワークをするのだから、首位を走るのも頷けるだろう。

 そんな東京を攻略するポイントを以下の二つに絞った。

 なお、分析対象試合は北海道コンサドーレ札幌同じシステムを採用するサンフレチェ広島との対戦とした。(23節FC東京サンフレッチェ広島

 

 

●442のサイドハーフ守備スイッチ

 相手のビルドアップに対し、サイドハーフのプレスを皮切りに連動するコンセプトが伺える。広島はこのコンセプトに対し、シャドーの選手(図の㉔東)がサポートに落ちることで、プレス回避を試みた。⑭オジェソクが㊹ハイネルにピン止めされているので、このスペースに落ちられるとつかみにくい。もし、③森重が㉔東についてきた場合、DFラインに穴を空けてしまう。東京は、⑱橋本が少し遅れて対応していたが、タイミング良くこのスペースを使われると、長い距離を走らなければならないので守備は難しくなるだろう。

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東京プレス 1分

 

 343に対する442の守備は、システム上ずれが生じてしまうのは言うまでもない。このずれを解消するために東京が試みたのが、予め⑧高萩が⑭森島をマーキングするという戦術だ。これにより、後ろの人数が同数になり、マークする相手がはっきりとした。

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東京守備 高萩マーキング 32分

 マーキングの相手がはっきりすることによって、守備の戸惑いは解消されるだろう。しかし、この守備の場合、ボールホルダーへのプレスで縦パスを制限することができれば問題ないが、少しでもタイミングが遅れてしまうと、中央の縦パスを許してしまう。このようなエラーを意図的に作り出すためには、プレスを受けるストッパーの選手(図の⑲)の立ち位置が重要になる。リベロの選手(図の㉓)との距離が遠すぎるとサイドに追い込まれるようにプレスを受けてしまう。距離を近くすることによって、より中央へのアングルができ、⑧高萩が空けたスペースを有効活用できる。

 

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遠いサポート

 

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近いサポート

 東京の守備におけるコンセプトであるサイドハーフのプレスに対し、ストッパーの立ち位置が重要なポイントとなるだろう。

 

 

●前に1人残し起点をつくるカウンター

 東京の特徴である鋭いカウンターについて考察していく。東京の自陣リトリート時は、9人で守備し、前に1人残すオーガナイズ。

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東京守備 リトリート時

 なんといっても、東京のカウンターを破壊的なものにしているのは、2トップのスピードとフィジカルだろう。そして、追随し駆け上がってくる㊴大森や⑩東。さらに、DFラインから②室屋が応戦するという構図だ。まず、相手がボールを奪った瞬間に狙ってくるのは、前に残る⑨オリヴェイラもしくは⑪永井の背後もしくはサイドのスペース。そこで、起点をつくり、後ろから湧き出てくるサポートで厚みを増す。守備→攻撃のチャンスパターンの多くは、FWの流れる動きから始まっている。

 重要になるのは、1トップに対する明確なアプローチボールホルダーへのプレスである。カウンターのリスク管理という言葉があるが、ただ数的優位をつくり、残っていればいいわけではない。よく見るのは、2対1で守っているが、DFの間を走られサイドで起点をつくられる。これでは管理されてはいない。その点、広島の守備(前半10分)は、前に残っている⑨オリヴェイラに対し、㉓荒木がはっきりとマーキングし、②野上がインターセプトを狙うという役割が明確だ。後ろに3人残すか2人残すかという議論はおいといて、その場に応じた明確な役割が必要である。

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広島 リスク管理 10分

 もう1つの重要な点は、ボールホルダーへのプレスだ。同じ10分のシーンだが、広島は奪われた瞬間に、ボールを囲むようにプレスを試みている。それに加え、⑮稲垣や⑭森島も次にパスを受ける可能性が高い選手に素早いマーキングを行っている。

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広島 ボールホルダーへのプレス 10分

 奪われた瞬間に間髪入れず、ボールおよび周辺を囲むことで出所を封じることができる。ボールを蹴るのは人である以上、そこから蹴らせなければいいという論理だ。カウンターからのピンチが多くなかったのは、このような整備された守備によるものだと考察した。

 

 

●見どころ

 今節の東京戦の見どころを2点にまとめた。

  1. サイドハーフのプレス回避の手段
  2. リスク管理の役割ときりかえのはやさ

 札幌のビルドアップの起点になるのは、福森だろう。彼がどこに位置し、プレスを回避していくのかがポイントとなる。また、おそらく高萩がチャナティップにマーキングする構図が予想される。縦パスから前の3人によるコンビネーションで崩していくことを期待したい。

 フィジカルの強さが特徴のキムミンテが、どこまで強力FW陣を抑えるかも見どころといえる。また、攻撃時後ろに残っている選手がどのような役割を分担しているか読み取ることができれば、おのずとピンチは少なくなるだろう。攻撃的なミシャサッカーが、どれくらいのバランスで攻撃に人数をかけるかも楽しみのひとつだ。

 

 いずれにしても、手堅い戦術の東京との対戦は、ハードなものになるのは間違いない。クラシックな442を敷く東京に対し、モダンな攻撃的サッカーを志向する札幌との戦いは、互いに今後を占う一戦になることは言うまでもない。